研究概要 |
電顕的in situ nick end labeling法 (EM-TUNEL)の開発に昨年度成功した.これによりアポトーシスに特徴的な濃縮した核クロマチン上に断片化DNAを金コロイド標識により可視化し,アポトーシスの超微形態とDNA断片化が同時に観察しうる.本年度は本法を用いてウサギの心筋梗塞モデルを対象に心筋梗塞にみられる心筋細胞のDNA断片化と超微形態の関係を調べた.30分冠閉塞後,0あるいは30分再灌流では,超微形態はオンコーシス(膨化死,従来のネクローシス)を呈しDNA断片化を示す金コロイドの集積はみられず,ゲル電気泳動上もラダーパターンはみられなかった.しかし,2ないし4時間再灌流では超微形態上オンコーシスを呈した心筋細胞核にDNA断片化をしめす金コロイドの著明な集積がみとめられ(すなわちEM-TUNEL陽性),ゲル電気泳動上もラダーパターンがみとめられた.典型的なアポトーシスの超微形態を有する心筋細胞は全時間を通して全くみとめられなかった.以上より,虚血・再灌流では心筋細胞が不可逆的オンコーシスになった後でDNA断片化が生じる.このことはDNA断片化はアポトーシスの特異的所見ではないことを示唆し,心筋細胞でみられるTUNEL陽性心筋細胞やDNAラダー,すなわち,従来のいわゆる「アポトーシス心筋細胞」は,DNA断片化を伴ったオンコーシス心筋細胞であり,アポトーシスとは異なる範躊に属することを明らかにした.
|