LDLの質的特徴である粒子サイズは、昨年の検討でインスリン抵抗性や高インスリン血症で細小化することが明らかになったが、その粒子サイズの規定因子は他に重要なものがないかを検討した。すでに疫学的検討よりLDL粒子サイズは遺伝子的因子が強く関与していることがわかっているので、冠動脈硬化と深い関係が報告されているAngiotensin converting enzyme (ACE)のI/Dの遺伝子多型およびApolipoprotein E (Apo E)のε2-4の遺伝子多型とLDL粒子サイズの関係を検診で訪れた136名を対象として検討した。ACEの多型性はLDLサイズおよび各血中脂質レベルとの関与はみられなかった。一方、Apo Eでは有意な関与がみられた。即ち、ε2を持つ症例は総コレステロールが低く、ε4を持つ症例は総コレステロールは有意な差は認められないが、LDL粒子が小さかった。LDL粒子サイズを規定している因子を検討するためステップワイズ回帰分析で求めたところε4は独立した規定因子であることがわかった。よくみられるApo Eの遺伝子多型は二重の意味で冠動脈硬化に関与する因子になっている可能性がある。つまり、ε2はコレステロールを低くして抗動脈硬化に、ε4はLDL粒子を小さくすることで動脈硬化促進に関与している。
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