研究概要 |
1.5Tの磁気共鳴装置にプロトン励起のための第2ラジオ波送信チャネルを装着し,まずファントム実験を行った.表面コイルには,リン用の送受信両用の円形コイルと,その上に同軸となるように重ねて装着してプロトン励起に用いる全体として長方形の8字型コイルを使用した.ファントムには,hexamethylphosphoric triamide(HMPT)と無機リン酸(Pi)の原液1mlをそれぞれアンプルに封入したものを水で満たした容器の中に固定したものを使用した.これは当施設でこれまでリン化合物の定量に用いてきたものである.Depth-resolved surface-coil spectroscopy(DRESS)によりスライス厚25mmの関心領域を設定し,この部のプロトンについてシミングを行い,WALTZ-16 sequenceを用いて,連続的なプロトン励起を行った.この時の電力はwattmeterで測定して0.5ワット以下であった.一定のパルス繰り返し時間を用いてリンの核磁気共鳴スペクトロスコピーを行ったところ,HMPTとPiのピークの高さの比(HMPT/Pi)は,プロトン励起無しでは0.498±0.022に対して,励起後0.688±0.025と有意に増加した.一方,HMPTとPiのピークの半値幅の比(HMPT/Pi)は,プロトン励起無しで3.193±0.044,励起有りで3.050±0.678と有意差を認めなかった.これによりプロトンの励起で相対的なHMPTの信号強度の増加が得られることが判明した.その機序は,HMPTとPiのいずれにおいてもリン原子と水素原子が直接結合していないことや半値幅が変化しなかったことから推測して,デカップリング効果よりむしろ核オーバーハウザ-効果によるものが大きいと考えられる.その方法のヒト心筋への応用は来年度に行うこととした.
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