心筋細胞においてgp130を介する情報伝達系により調節をうける遺伝子を明らかにし、機能的役割に付き検討した。心筋細胞においてgp130の活性化に引き続き、Jak-STAT系およびMAPキナーゼが活性化され肥大シグナルを伝達すること、また、STAT1がbcl-x遺伝子の発現調節に直接関わり、bcl-xLの発現増強がLIFによる細胞保護作用の一部を担っていることを明らかにした。 さらにgp130の活性化に引き続きP13キナーゼの活性化を確認し、これを介してP70 S6キナーゼおよびAktの活性化が誘導され、P13キナーゼを介する情報伝達系も、心筋細胞肥大および保護に関わっている可能性が示唆された。 つぎに、gp130を介する情報伝達系の一つであるSTAT3に注目し、アデノウイルスベクターを用い心筋細胞へ導入し、STAT3を高発現あるいは活性を抑制する系を作成した。STAT3の高発現はLIF刺激による心筋細胞肥大を増強し、c-fos、ANF mRNAの発現亢進、leucineの取り込みを増強した。Dominant-negative-STAT3の細胞導入は、これらを著しく抑制した。MPキナーゼの活性化は、STAT3の活性化に伴う遺伝子発現の最大作用には必要であることも明らかにした。 in vivoにおけるSTAT3の機能的役割を検討するため、wild typeおよびdominant-negative STAT3をα型ミオシン重鎖遺伝子プロモーターに結合し、心筋特異的にこれらのSTAT3を高発現させたトランスジェニックマウスを作製し、現在解析をすすめている。
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