研究概要 |
近年、血管は血行動態の変化や種々の刺激により、その構造を活発に変化させることか明らかとなり、この変化は血管リモデリングと呼ばれ、高血圧や動脈硬化などの多くの血管病の病因、病態と関連して注目されている。血管リモデリングは細胞レベルでは主に血管平滑筋細胞の遊走、増殖/肥大、細胞死(アポトーシス)の結果と理解される。私共は血管平滑筋細胞の肥大反応、遊走反応を促進し、さらにアポトーシスを抑制するアンジオテンシンIIが複数の蛋白質チロシンリン酸化反応を引き起こし、細胞膜受容体から細胞核にシグナルを伝えるMAPキナーゼを活性化し、前癌遺伝子c-fosの発現を引き起こすことを明らかとした。また、アンジオテンシンIIは前癌遺伝子産物Rasの活性化を引き起こすが、この活性化はMAPキナーゼの活性化に必ずしも必要でないことを明らかとした。さらにアンジオテンシンIIは細胞が細胞外基質と接着する部位である接着斑へもシグナルを伝えパキシリン、focal adhesion kinaseやp130^<Cas>のチロシンリン酸化を引き起こすこと、さらに、p130^<Cas>はアンジオテンシンIIによりc-Crk IIとの会合を引き起こすことを明らかとし、Rap1,Rasなどの低分子量GTP結合蛋白の制御に関与する可能性を示した。また血管平滑筋細胞においてアンジオテンシンIIは、細胞の生存、増殖に関与するAkt/Protein Kinase Bを活性化することを明らかとし、この活性化にはEGF受容体を含むチロシンリン酸化酵素、フォスファチジルイノシトール3キナーゼが関与し、さらに細胞骨格が保たれていることが必要であることを明らかとした。
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