研究概要 |
1. 臨床症状及び病態の整理 QT延長症候群患者の安静時心電図を、T波形によって分類し、各群間での相違を比較検討した。1群:幅広く振幅の大きいT波、2群:低振幅のT波、3群:長いST部分、4群:安静時正常T波の4群に分類した。失神の発生は1群では、運動時や精神的ストレスを受けたときに多く、2群では安静時や睡眠中に多かった。4群では、すべて運動中であった。トレッドミル運動負荷に対するQTc間隔の反応は、1群では負荷終了後2分においてQTc間隔が延長したが、2群では運動負荷直後に一過性にQTc間隔が短縮した。4群では運動負荷中から多源性の心室性期外収縮が出現し、運動負荷後U波の異常が見られた。24時間ホルター心電図記録からQT間隔とRR間隔の動的な関係を解析した結果では、QT延長症候群患者全体としては、健常対象者に比較してRR間隔に対するQT間隔の回帰直線の傾きが急峻であった。しかし、各群間で明らかな差は認められなかった(江森 哲郎、大江 透:第61会日本循環器学会総会・シンポジウムIII発表)。この急峻となった回帰直線の傾きは、βブロッカー治療によって、変化しなかった(EmoriT,OheT et al.Annals of Noninvasive Electrocardiology.1997;vol2:40-46)。 2. 遺伝子診断 QT延長症候群患者の血液のリンパ球からDNAを取り出し、従来報告されているLQT1,2,3遺伝子をPCRにより増幅することに成功した。LQT2(HERG)遺伝子においては新たなプライマーを作成し、一度のPCRでLQT2遺伝子の全長を増幅することに成功した。今後PCR-SSCP、及びシークエンスを行い遺伝子の変異の有無を調べ、上記の病態との関連を検討していく予定である。
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