研究概要 |
心不全発現過程における心収縮、拡張障害を、心筋筋小胞体(SR)のCa放出、取り込み能の障害と並行して検討した。平成9年度、犬の頻脈誘発性心不全モデルにおいて、強心薬(dobutamine,milrinone)に対する収縮予備能は低下しているが、拡張予備能は保たれていることを示した(第47回米国心臓病会議(ACC),1998)。平成10年度はその原因の一つとして、dobutamine,milrinone投与下における、心筋SR内CaATPaseのcAMPに対する感受性が、増大していることを明らかにした。さらに、milrinoneは拡張能改善効果、CaATPase活性増大効果が、dobutamineと比較して強く、その理由として、SR膜結合型のphosphodiesteraseIIIを阻害し、CaATPase近傍のcAMPを局所的に増加させる可能性が示唆された(Journal of Cardiology,vol 32,supp 232,1998)。また心不全時の心収縮障害に直結する現象として、SRからのCa放出速度の著明低下を9年度に示したが(第47回米国心臓病会議(ACC),1998)、10年度はその機序として、Ca放出channel(RyR)の修飾蛋白であるFK binding protein(FKBP)がRyRからはずれている結果([3H]FK506結合実験にてBmax低下)、RyRが構造変化をきたし(RyRをcrosslinker SAEDを用いて蛍光ラベルしたSRにて確認)、RyRのチャンネルstabilityが低下していること、さらに、Ca放出刺激に対する反応性低下およびCaのleaking減少を生じていることを明らかにした(第63回日本循環器学会総会学術集会、平成11年3月発表予定)。
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