本課題では、慢性心不全患者(CHF)とくに長期間の心不全状態では末梢血管では、機能的かつ構造的な再構築が存在するかどうかを検討した。研究発表の欄の1の研究では、一酸化窒素の基質であるL-アルギニンを注射し、CHFの下肢の血管機能がどのように変化するかを研究した。その結果、下肢の阻血後の反応性充血は改善することを見出した。しかし、運動耐容能の改善効果は明らかではないことも明らかにした。研究発表3では、今までの報告では、CHFの安静時の血管トーヌス調節に一酸化窒素がどの程度か関与するかが不明であった。そこで本研究では、弁膜症によるCHFを対象に一酸化窒素合成酵素阻害薬を注入し、プレチスモグラフィーにて血流量の減少程度を健常対照例と比較した。その結果、対照群にくらべCHFでは明らかに減少程度が少ないことを見出した。CHFでの末梢循環障害の原因として四肢血管床での一酸化窒素の産生・活性の低下が関与している可能性を明らかにした。また、研究発表4では、いままでのわれわれの研究結果を中心にして総論“Peripheral vascular remodeling in chronic heart failure: clinical relevance and new conceptualization of its mechanisms"をアメリカ心不全学会会誌(J Cardiac Failure In Press)に公表し、心不全での末梢血管リモデリングの重要性をしめす。
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