研究概要 |
予期せぬ突然死の半数を占めるとされる急性心筋梗塞症の発症の危険因子やその発症機転は必ずしも明らかではない。しかも、日本人心筋梗塞症での遺伝子系の頻度は欧米人と異なることが指摘され、日本人での研究成果が注目されている。本研究はコホートとする一般住民および心筋梗塞症患者で、それぞれの遺伝子に特有の多型を認識するプライマーを用いるPCR法でapolipoprotein E(apo E)、アンジオテンシンIIタイプ1・レセプター(ATR1)、血管内皮型一酸化窒素合成酵素(ecNOS)、ホモシスティン関連methylenetetrahydrofolate reductase (MTHFR)の遺伝子多型を解析して日本人心筋梗塞症例における意義を検討した。結果。1)健常人において、apo E遺伝子での ε4 allele、ATR1遺伝子でのA1166C変異[AC+CC]型の頻度は欧米人に比べて低値であった。2)apo E遺伝子での ε4 allele、ATR1遺伝子でのA1166C変異[AC+CC]型、ecNOS遺伝子Intron 4に存在する27塩基対の繰り返し配列の遺伝子多型4a/a,MTHFR遺伝子でのC677T変異によるalanine/valine(A/V)多型のVV型は、心筋梗塞症例で高頻度であった。3)MTHFR遺伝子多型VV型でのホモシスティン濃度は、他の遺伝子型に比べて高値であった(VV型11.6±5.6μmol/L;AA型8.6±3.3μmol/L,AV型8.9±4.1μmol/L)(現在投稿中)。3)ATR1遺伝子でのA1166C変異[AC+CC]型では、多枝病変例が多かった。ecNOS遺伝子型と冠動脈病変との関連を調べて虚血性心疾患での意義を検討した。今後,このような複数の遺伝子型の組合わせによる遺伝的疾患感受性の検討が進み、それぞれの個人にあった心筋梗塞発症の二次予防あるいは一次予防指針として臨床応用されることが期待される。
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