研究概要 |
1、50名の健常成人および冠動脈疾患患者を対象とした経胸壁ドプラ心エコー図法(TCE)による冠動脈血流シグナルの検出率は、カラードプラ法およびパルスドプラ法で、それぞれ左冠動脈主幹部81.3%,62.5%左前下行枝近位部90.6%、84.4%、左前下行枝中間部78.6%、75.0%、左前下行枝末梢部92.9%,92.9%、左回旋枝近位部77.4%,71.0%,右冠動脈近位部62.5%,53.1%,右冠動脈末梢部(後下行枝)83.3%,83.3%であった。 2、ドプラガイドワイヤー法(DGW)と角度補正を行わないTCEで前下行枝冠動脈血流速度を測定し比較すると、TCEは近位部では約40%過小評価であったが末梢部ではほぼ等しい値を示した。 3、15例の狭心症や心筋梗塞症例でジピリダモ-ル負荷による左前下行枝の冠血流予備能(CFR)の測定を、DGWと角度補正を行わないTCEで行った。その両者で測定されたCFRには高い正相関の関係があった(r=0.93,p<0.0001)。 4、左前下行枝近位部に狭窄を有する65例の冠動脈疾患例と30例の正常冠動脈例で左前下行枝血流シグナルを検討して、冠動脈疾患例で狭窄血流シグナルを高率に検出できた。また、左前下行枝内の数点で血流速度を測定して、測定速度(拡張期平均速度)の最大値と最小値の比(DMVR)で左前下行枝狭窄の有無を分別できた。 5、DMVR2.0以上あるいは中隔枝の拡張期逆行性血流シグナルの存在を左前下行枝狭窄の診断基準として、冠動脈造影前に冠動脈疾患が疑われた連続60例で検討すると、TCEによる左前下行枝狭窄検出能は感度89%、特異度88%であり、正診率88%であった。
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