研究課題/領域番号 |
09670751
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
熊谷 裕生 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50170048)
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研究分担者 |
大島 直紀 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20265789)
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キーワード | 高血圧 / 交感神経中枢 / 延髄吻側腹外側領域 / パッチクランプ法 / 興奮性シナプス後電位 / 摘出脳幹脊髄標本 / レギュラータイプニューロン / ネットワーク |
研究概要 |
私どもは高血圧が発症するのは、交感神経中枢のニューロンの活性が亢進するためであろうという仮説を検証するために、「神経根、迷走神経求心線維を含め、延髄から胸髄までの神経系を取り出した、摘出脳幹-脊髄標本」という新しい実験系を用いて、延髄吻側腹外側領域(RVLM)ニューロンの膜電位の電気生理学的性質を細胞内記録で調べている。従来のスライス法や培養細胞と異なり、中枢交感神経系を統合ネットワークとして扱える系を用いて、パッチクランプで細胞内電位を記録することにより交感神経系の検討を行った研究は、世界にない。正常血圧ラット(WKY)と本態性高血圧症のモデルである高血圧自然発症ラット(SHR)を用い、血圧の等しい新生児期と、血圧の差が生じる生後8週の、RVLMニューロンの電気生理学的性質を比較した。 1. RVLM交感神経中枢ニューロンとして(1)規則的に自発発火するregular type(n=20)、(2)不規則に自発発火するirregular type(n=106)、(3)静止電位では自発発火しないが、外向き電流を与えることにより活動電位を生じるsilent type(n=25)の、3種類を解析できた。 2. regular typeのRVLMニューロンは、興奮性シナプス後電位(EPSP)を示さず、静止電位-45mV、振幅50mVで、4-5Hzという高頻度の規則正しい波形を示した。low-Ca^<2+>-high-Mg^<2+>液で灌流することによりシナプス伝達を遮断してもregular type neuronの発火頻度が減らないことから、このニューロンは他のニューロンに依存せずに自発的に発火していることが示された。 3. 一方、irregular typeは発火の間にEPSPや抑制性PSPを多数示し、発火頻度は2Hzであった。low-Ca^<2+>-high-Mg^<2+>液でシナプス伝達を遮断すると発火がほとんど消失したことから、irregulartype neuronは他のニューロンからの入力に依存して発火していることが示された。 4. パッチピペットに充填したLucifer yellowをニューロンに注入し、顕微鏡的に形態を検討した。irregular typeは、regular typeに比して大型で樹状突起が多いことから、他のニューロンからの入力を受けやすいと考えられ、形態と2.および3.の電気生理学的性質とが一致した。
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