研究課題/領域番号 |
09670752
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
谷 正人 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (50163613)
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研究分担者 |
高山 美智代 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60265824)
長谷川 浩 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00237984)
菅沼 由佳子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00296584)
山村 憲 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70276260)
新村 健 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70206332)
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キーワード | myocardial ischemia / heat shock protein / aging / ischemic tolerance / Cold preservation / Caraio-plegia |
研究概要 |
1)加齢に伴う虚血耐性低下の検討:3月齢、1年齢、2年齢のFischer344ラット摘出心において心機能の回復、心筋エネルギー代謝産物の回復および心筋逸脱酵素流出を指標として25分間の完全虚血と30分間の再潅流を行った。心機能、心筋エネルギー代謝の回復は1年齢ですでに3月齢にくらべ低下し2年齢と同程度であった。心筋逸脱酵素の流出は心機能・エネルギー代謝回復の低下に一致して3月齢に比し1年齢、2年齢で増加していた。これらの加齢に伴う虚血耐性の低下は、虚血前にischemicあるいはhypoxic preconditioningを施行しても改善されなかった。2)遺伝子導入予備実験:3月齢のFischer344ラット(n=60)の体重を測定後、開胸し直接心外膜直下にHVJ-liposome+plasmidによるHeat Shock Protein(HSP)遺伝子の導入を行い閉胸した。24,48,72時間後、心摘出し心重量を測定し、一部の心臓(各n=4)で遺伝子導入部のHSPの発現をWestern Blotting法により検討した。発現効率は24,48,72時間いずれにおいても有意差はなかった。しかし発現効率は全心筋細胞の約30%前後であり、充分な発現効率を得られなかった。3)Cold Preservationおよび虚血再灌流実験:24-72時間で発現効率に差がなかったため、24時間飼育後4℃のCardioplegia後保存した。6時間(n=4)、12時間(n=4)あるいは24時間(n=4)保存後に再び37℃で60分間の酸素化灌流を行い、遺伝子導入部および非導入部の心筋の保存状況を病理学的に検討したが、明らかな差はなかった。一部の心臓は6時間(n=8)、12時間(n=8)あるいは24時間(n=8)保存後に再び37℃で20分間の酸素化虚血前灌流の後、25分間の完全虚血と30分間の再灌流を行った。虚血前と再潅流後の遺伝子導入部と非導入部における病理学的変化の検討では遺伝子導入群において、心筋糸粒体の膨化・変性が軽減される傾向が認められたが顕著では無かった。心筋エネルギー代謝産物および心筋逸脱酵素の流出においても、遺伝子導入群において改善傾向を示した。4)単離心筋細胞を用いた低酸素負荷・再酸素化実験:一部の心臓は37℃コラゲナーゼを含む灌流液で60分間酸素化灌流を行い心筋細胞を単離した。48時間後30分間95%N_2/5%CO_2で低酸素化した灌流液に切り替えsuperfusionを行った後再び95%O_2/5%CO_2で酸素化した灌流液に切り替え20分間superfusionし、その変化を経時的に観察した。遺伝子導入部より単離された心筋細胞では、低酸素負荷・再酸素化による心筋の形態変化が少ない傾向にあった。今回の検討では、HVJ-liposome+plasmid法による遺伝子導入効率がこれまでの報告ほど高率でないことが示された。このため多くの実験においてHSP遺伝子導入群(導入部)における優位性が充分示せなかった。今後cationic liposome等を用いて導入効率の上昇を計り、再度検討する必要があると考えられた。
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