研究概要 |
頚静脈より右心耳に電極を挿入固定し高頻度ペースメーカーを頚部に植え込んだ。刺激頻度50Hz,on time 5秒、off time 5秒の間隔刺激を2-4週間続けることにより持続性の心房細動犬を作成した。経胸壁的に右房側および左房側へ線状焼灼を行った。アブレーション用カテーテルとして、7F、4極(7mmコイル、電極間距離1.25mm )のAmazrカテーテルを用い、60度の温度コントロールで60秒間焼灼した。高周波発生装置としてMedtronic社製 Atackerを使用した。 1.Amazrカテーテルによる焼灼巣 焼灼巣は電極の両端で焼灼範囲が広く、深達度が深くなっており、電極中央に向かうにつれて焼灼巣は縮小した。順次電極通電の場合は2極目以降の電極と組織の接触が不良となり電極中央付近での焼灼巣は1極目に比較しさらに小さくなる傾向を認めた。 2.心房細動に体するカテーテルアブレーション カテーテルを徐々に移動させるpoint-by-point 法により線状焼灼巣を作成した。実験初期には植え大静脈ー下大静脈、下大静脈-三尖弁、心房中隔 -右房自由壁-三尖弁の線状焼灼を試みたが、焼灼後も心房細動は誘発された。よって右房側の線状焼灼は高頻度刺激により誘発される持続性心房細動にたいして効果がないと判断した。次に左房の肺静脈周辺および肺静脈に囲まれた領域を孤立化させるようなアブレーションを行った。しかし焼灼後も心房細動は誘発された。組織学的には心外膜側からの高周波通電により心内膜側に血栓形成は認められず、貫壁性焼灼の得られた部位も認められ、安全性は確認された。しかし伝導の途絶に必要な貫壁性の焼灼を線状に作成することは困難で、心内膜側が正常に残存する部位も認められた。 3.考察 カテーテルアブレーションによりMAZE手術類似の線状焼灼巣を形成し慢性心房細動の洞調律化を実験的に検討した。心外膜側からでも心拍動下では貫壁性の線状焼灼巣を形成することは難しく、線状焼灼巣作成目的で作られたカテーテルであっても、組織の形状、接触圧または接触面積により十分な焼灼巣を得られないことがあり、カテーテルアブレーションによるMAZE手術は困難であると考えられた。
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