我々は本研究に於いて新たに樹立したヒトマクロファージ細胞株MABS-1を用いて変性LDLの貪食によって特異的に発現する蛋白質を解析し、その蛋白質の動脈硬化形成における役割を明らかにすることを目的に研究をおこなった。最近、この細胞の性質を調べたところ、変性LDLの貪食の他に動脈硬化症の原因とされる一酸化窒素やperoxynitriteを常に産生していたので、この細胞は動脈硬化症の研究に有用であることがわかった。我々は、ディファレンシャルディスプレー法によって変性LDL貪食後に特異的に誘導される遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、56遺伝子がスクリーニングされ遺伝子の部分的なDNA配列を同定している。しかしながら、約3分の2の遺伝子は再現性に問題があり再現性の検証を行っている。いままで同定したうちの遺伝子は既知のものと未知の遺伝子があり、それぞれの遺伝子の発現に関して変性LDLによる特異的誘導であるのかを確認している。未知の遺伝子に関してはRACE法により全長のcDNAライブラリーを作成し分子特性を調べ、動脈硬化症発生との因果関係を明らかにして行く予定である。
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