研究概要 |
本研究の目的は血管内皮細胞に特異的な遺伝子であるVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)を虚血を有する心筋に投与することより、側副結血行路の発達を介した虚血心筋の救済を試みることである。 本年度は、25匹の兎(日本白色種)を実験対象とした。麻酔、透視下に左室内に留置したカテーテルから直径15μmのInをラベルしたマイクロスフェア-を注入した.この間,下行大動脈をバルーンカテーテルで,両側頚動脈を結さつ糸を用いてそれらの血流を一過性に遮断した.これにより準選択的にマイクロスフェア-を心筋の血管床に滞留させ,心筋虚血を作成した。注入個数は2.8×10^4個/kgとして、3-4回で分注した。これは安静時の血流量を変化させずに、反応性充血を消失させる総量を予備実験で決定した量に基づいている。左室内カテーテルを介して局所心筋血流用の直径15μmのマイクロスフェア-(I)を注入して虚血作成直後の心筋血流分布を評価した。ついで、心断層エコー図法により虚血心筋の壁運動の異常を記録した。虚血1時間後に15匹ではマーカー(大腸菌lacZ)発現遺伝子あるいは生理食塩水を(対照群)、他の10匹ではヒトVEGF発現遺伝子を組み替えアデノウイルスを用いて虚血部心筋に注入した。対照群の15匹、VEGF群の10匹のいづれにおいても、2週間後に、Ba-マイクロスフェア-を2×10^6個注入して二回目の心筋血流分布と心断層エコー図法による虚血心筋の壁運動の評価を行った後、屠殺した。これらの実験により、VEGF群では対照群と比較して、心筋壁運動の改善、心筋血流量の増加を2週間後に認めた。組織学的にも心筋虚血の改善を認めた。大腸菌lacZ発現遺伝子を組み込んだアデノウイルスを投与した例で、冠血管内皮にlacZの発現が確認された。
|