血栓親和性の高い血栓溶解剤静注時に、塞栓部に対し体表から超音波照射することで血栓溶解時間を短縮し、早期血流再開が可能な低侵襲早期血管開存法はin vitro in vivo実験を通してその基本的有効性が確認されてきた。超音波周波数は200KHz〜300KHz再開通時間は30分弱、rt-PA投与時間の短縮に伴う使用量の軽減などを確認し、経胸的冠動脈再開通や経頭蓋的脳血流再開通などの深部血管への適用の基礎検討を行った。 (1) 超音波プローブによるhot spotの探索 前年度は超音波音場内の組織音響吸収温度上昇分布解析をサーモグラフィを用いて行った。これに加え本年度は針型(0.5mm)サーミスタ温度計を用いて、局所高音圧領域の温度上昇を測定した。牛肉片内の音場分布をシュミレーションした結果から予想される高音圧スポットにサーミスタを留置し、経時的な上昇温度を測定した。上昇温度は最大でも2〜3℃に留まり、試作プローブは体内にhot spotを形成しないことを再確認した。 (2) 陳旧化血栓への有効性 深部血管内の血栓は陳旧化することも少なくなく、それに対する有効性についてヒト血液24時間血栓(3ml)を作成し検討した。陳旧化の進んだ血栓に対しても超音波照射の有効が認められ、血栓溶解剤単独投与時の約1/2時間でFDP-DD増加が進み、再開通時間の短縮、また予後の良好なことを予測させるものとなった。 超音波治療法としての深部血管内血栓溶解に関連する安全性の確認を終了し、また陳旧化血栓への有効性も確認することができ、十分な超音波パワーを照射しながら早期血流再開に関する有用な臨床成績の上げうることを確認した。
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