今回の研究目的はPDGF-A鎖mRNAに対するアンチセンスDNAを高血圧症の血管障害及びPTCA後の再狭窄の遺伝子治療として確立する事であり、平成9年度はアンチセンスDNAの自然発症高血圧ラット(SHR)の心血管臓器増殖に対する作用をin vitro、in vivoで検討し、アンチセンスDNAの効率の良いデリバリーシステムを検討した。 PDGF-A鎖mRNAの開始コドン(ATG)領域に相補的なアンチセンスオリゴはSHR由来VSMCの基礎増殖を有意に抑制したが、正常血圧Wistar-Kyotoラット(WKY)由来VSMCの増殖には影響せず、PDGF-AA蛋白の発現を抑制しPDGF-A鎖mRNAの発現は抑制しなかった。in vivoでSHRに投与すると大動脈の^3H-チミジンのDNAへの取り込み、PDGF-AA蛋白産生を著明に抑制した。アンチセンスオリゴをpolynuculeokinase-4を用い^<32>PでラベルしSHRの腹腔内投与したところ、大動脈での取り込みは他の臓器の2倍で臓器への取り込みは0.001%であった。さらに脳卒中易発症高血圧ラット(SHR-SP)では腎臓のDNAを有意に抑制した。 PDGF-A鎖mRNAはalternative splicingを受けエクソン6のあるPDGF-A長鎖とないPDGF-A短鎖が存在するので、エクソン6に対しアンチセンスオリゴを作成し、SHR及びWKY由来YSMCのDNA生合成に対する作用を検討した。エクソン6に対するアンチセンスオリゴはSHR由来VSMCのみ基礎DNA生合成を抑制し、SHR由来VSMCの過剰増殖にPDGF-A長鎖が関与している事が確認された。
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