高頻度ペーシングによる心不全モデルを用いて末梢血管(腸管膜動脈)におけるアドレナリン受容体機能にギャップジャンクション機能がどの程度関与しているかを、その抑制作用を有するヘプタノールを用いて検討することが目的。ビーグル犬を用いた高頻度ペーシングの心不全モデルであるが、右室ペーシング260bpmで5週間経過するとL VdP/dtは平均で3984mmHg/secから2804mmHg/secへと低下する。この際、イソプロテレノールの陽性変力作用も平均で40%低下する。しかしながら、腸管膜動脈を摘出した血管でのイソプロテレノールの反応低下はかなり軽微であることが予測されるため、摘出血管の評価法を確実にするために、まず、明らかにギャップジャンクションが障害されていると考えられるモノクロタリンを用いて作成した肺高血圧モデル(ラット)の肺動脈血管を用いて研究を行った。このモデルでは、モノクロタリン40mg/kgを皮下注後、2週後で、平均肺動脈圧は対照群平均17.9mmHgに対して42.8mmHgと高値を示した。フェニレフリンの濃度を200nMによる摘出肺動脈最大反応を基準にして、これに対して、ヘプタノールを予め投与した後に、同様の収縮反応を評価すると35%低下することが確認された。しかし、このヘプタノールの抑制効果はオーガンバスの微妙な温度差でその抑制にばらつきがでることが確認され、温度差がバス内で発生しないように水流ポンプの整備をふくめ、システムの改良を加えた。この時点に到達するまでに、機材整備等も含めて、平成9年から11年までの3年間を要した。このような詳細に関しては、論文内にも記載が乏しく、また、この分野はいまだに研究が十分進行していないことから技術的にかなり困難な領域と考えている。しかし、今後、高頻度ペーシング心不全モデルの腸管膜動脈を用いて研究を継続していきたいと考えているが、反応性が不安定なため、適宜、サンプルの摘出時期、摘出部位等を検討しながら、かなりの期間が必要であることが予測れさる。
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