研究概要 |
<目的> アドレノメデュリン(以下AM)の強力な降圧効果は,血管平滑筋細胞のcAMP増加に基づく平滑筋弛緩によりもたらされるとされている。一方培養心筋での検討で、心筋にもAMのmRNAの発現があることが知られた。心筋の興奮収縮連関におよぼすAMの作用とその機序を検討するのが本研究の目的である。 <結果・考察> モルモット(200〜300g)の右心室より摘出した乳頭筋(1.5×10mm)を標本とし、正常Tyrode液灌流下、通常の微小電極法により活動電位を,またストレンゲージ法により収縮張力を同時記録、AM(10^<-7>〜10^<-5>モル)の両者におよぼす効果を検討した。AMは濃度依存性に20%活動電位持続時間を延長し,且つ収縮張力を増加した。この効果は、L型Ca^<2+>電流遮断薬との併用実験の結果等からAMのL型Ca^<2+>電流増加作用に由来するものと推定された。 <平成9年度の経緯と10年度の計画> 平成9年度は、心臓外科との関係からモルモット乳頭筋の興奮収縮連関に対するAMの効果の検討に終始してしまった。そこで今年度は、本題であるヒトの心房筋(出来れば心室筋)を標本として,その興奮収縮連関に対するAMの効果を検討する。また、家兎,ラット心室乳頭筋についても同様の実験を行い、AMの効果を比較検討する。さらに、ヒト心筋を含めこれら動物の心筋細胞をコレゲナーゼを用いて単離し、パッチクランプ法の活用によりイオン電流系の分析(主にCa^<2+>電流)を行いAMのもつ電気生理学的効果を詳細且つ多面的に検証する。また併せてその作用発現の機序に関して、受容体,細胞内情報伝達系の観点から研究を進めていく。
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