ヒト心房筋の興奮収縮連関ならびに異常自動能に対するアドレノメデュリンの作用

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670767
• 研究機関: 金沢医科大学
• 研究代表者: 今西 愿 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90108689)
• 研究分担者: 倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267725)
• キーワード: アドレノメデュリン / 心筋 / 興奮収縮連関 / パッチクランプ法 / イオン電流 / カルシウム電流

研究概要

<アドレノメデュリン(以下AM)作用の現況>
AMの電気生理学的作用は細胞の種類により相反する作用を示す。すなわち、下垂体プロラクチン産生細胞に対しては、Aキナーゼ活性を介し非特異的陽イオンチャネルを開口し膜を脱分極させ、プロラクチン分泌を促進する。これに対し、血管平滑筋細胞に対しては内向き整流Kチャネルを活性化,膜の過分極を促し平滑筋を弛緩させ、強力な降圧効果の発現をもたらす。他方、心筋の興奮・収縮連関に対するAMの作用は、今のところ全く分かっていない。
<本研究の概要>
モルモット(約300g)の左・右心室より摘出した乳頭筋(2×12mm)を標本とし、正常Tyrode液灌流下、微小電極法により活動電位を、またスレンゲージ法により収縮張力を同時記録、AM(10^<-8>〜10^<-6>M)の両者に対する効果を検討した。AMは濃度依存性に20%活動電位持続時間を延長し、且つ収縮張力は増加した。この結果は、Ca^<2+>チャネルブロッカーなどの検討からL型Ca^<2+>電流の活性化に由来すると推測され、現在パッチクランプ法を駆使しイオン電流の分析を行っている。本題であるヒト心筋の興奮収縮連関に関するAMの効果については、心臓外科からの標本入手の問題で残念ながら未だ解決していない。また、これまでの家兎,ラット心室乳頭筋の実験からAMの作用に種差が存在するようにも思われる。今後は、比較生理学の立場から作用発現の機序に関して、受容体,細胞内情報伝達系を中心に研究を進める予定である。

研究成果

• [文献書誌] Yasutaka Kurata: "Effects of sulfhydryl oxidoreduction on permeability of cardiac tetrodotoxin-insensitive sodium channel." Life Sciences. 63・12. 1023-1035 (1998)
• [文献書誌] Yasutaka Kurata: "Selective permeability of the cardiac tetrodotoxin-insensitive sodium channel to monovalent metal cations: kinetic analysis with flexible pore model." Japanese Journal of Physiology. 48・suppl.S73 (1998)
• [文献書誌] Yasutaka Kurata: "Mechanisms of group II B cation block of the cardiac sodium channel." Japanese Journal of Physiology. 47・suppl.S82 (1997)
• [文献書誌] Hirobumi Zaizen: "Diverse inotropic effects of 5-hydroxy tryptamine in heart muscles of various mammalian species." Heart and Vessels. 11・1. 10-17 (1996)
• [文献書誌] 今西 愿: "ヒト心房筋の浅い膜電位と細胞内Na,Kイオン活性" Japanese Journal of Electrocardiology. 15・3. 179-186 (1995)
• [文献書誌] Shunichi Miyamae: "Hyperpolarization induced by sodium removal in rabbit sinoatrial node cells:possible role of electrogenic sodium-calcium exchange." Journal of Electrocardiology. 28・2. 135-145 (1995)
• [文献書誌] 今西 愿: "頻拍症(頻拍の基礎:分担)" 西村書店, 543(22) (1996)
• [文献書誌] 今西 愿: "不整脈'95(ヒト心筋細胞の電気生理学:分担)" メディカルレビュー社, 201(15) (1995)