研究概要 |
1.研究成果: 心筋炎、および心筋炎後心筋症におけるアポトーシスの証明とウイルス感染による誘導について検討した。マウスの実験的コクサッキーウイルス性心筋炎の心筋において電顕的in situ hybridization(ISH)法、免疫電顕的検索を用い、ウイルスの局在と動態を解明した。ウイルス核酸は感染した心筋細胞細胞質に存在し、細胞質内の管腔様構造物内で、合成、輸送され細胞膜上に提示された結果、リンパ球により感染心筋細胞は障害されると考えられた。また電顕的TUNEL法を行い、超微形態学的観察と核酸のフラグメンテーションを同時に検討することの意義を示した。最近、内科的治療抵抗性の拡張型心筋症に対し、左室部分切除術が行われるようになったが、その切除心筋をもちいてISH法、およびPCR法を用い、エンテロウイルス核酸の存在を証明し、またその局在が心筋細胞特に心内膜直下の心筋細胞胞体内に多いことを示した。また切除心筋を用いてサイトカインとアポトーシス関連遺伝子(Fas,Bcl-2,BAX)発現の定量的検討を行なった。その結果、サイトカインmRNAが非常に強く発現し、かつウイルス陽性の症例の予後が不良である可能性が示された。また拡張型心筋症におけるアポトーシス関連遺伝子のmRNAは虚血性心疾患と有意な差はないことが判明し、アポトーシスが拡張型心筋症において特異的に意義を持つ訳ではないと推定された。 2.今後の展望: 心筋におけるアポトーシシスの多くは浸潤細胞でおこり、培養系を除き、心筋細胞でのアポトーシスははっきりと証明されていない。今後も左室部分切除術切除心筋を用いて電顕的TUNEL法や電顕的in situ hybridization法などの手法にて検討を重ねることが心筋におけるアポトーシス研究において重要と考えられる。
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