まず電顕的in situ hybridization(ISH)法を用い、マウスの実験的コクサッキーウイルスB3(CVB3)性心筋炎の心筋におけるウイルスRNAの局在を解明した。CVB3RNAは見かけ上正常あるいは障害された心筋細胞内で筋原線維間の胞体、特に小空胞ないし細管腔構造内に検出され、さらに間質の細胞壊死物質やマクロファージや線維芽細胞の胞体にも同定された。従って、ウイルスは心筋細胞の粗面小胞体周囲などで複製され、筋小胞体様の小空胞ないし細管腔を介し転送され、あるいは細胞壊死により間質に放出され、マクロファージに処理されると考えられた。またリンパ球が心筋細胞の形質膜と接着する部位の近傍で心筋細胞内にCVB3RNAの局在を検出し、ウイルス性心筋炎の細胞性免疫機序に関与する所見と考えた。 次に心筋炎におけるアポトーシスの存在について検討した。CVB3を接種したマウス心筋において、ラダーリングを認め、また電顕的TUNEL法陽性の心筋細胞が存在することを示した。しかし形態的に典型的なアポトーシスの像はみられなかった。臨床では左室部分切除術切除心筋を用い、PCR法によるウイルス核酸の検出、TUNEL法、リアルタイム定量的PCR装置PRISM7700を用いたアポトーシス関連遺伝子発現の検討を行った。心筋細胞でTUNEL法陽性細胞を認め、ウイルス陽性症例でアポトーシス関連遺伝子の発現をみたが、アポトーシス関連遺伝子の発現は強くなく、心筋のアポトーシスを積極的に支持する所見は得られなかった。
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