研究概要 |
赤血球分化の仕組を理解するために、血球分化に関与すると思われる組織・細胞系列特異的な転写因子の発現を解析するするため以下の実験を行なった 1.赤血球分化は巨核球の分化過程ときわめて近い関係にある。最近両者の共通の前駆細胞が発見された。そこで両者に共通して発現する転写因子の発現パターンを比較し赤血球分化が巨核球の分化からどのような仕組みで別れるかを解析した。巨核球分化にはGATA-1転写因子が不可欠であることが明かとなったが、GATA配列に結合するその他の因子の役割については全く不明である。そこで両者で発現しているGATAファミリーの遺伝子GATA-1,GATA-2と別のタイプの転写因子EVIー1の発現を解析した。また、GATA結合タンパクではないが巨核球特異的な遺伝子の転写制御領域にGATA配列に必ず隣接した存在するEtsファミリーの遺伝子ets-1の発現を解析した。 3.S14の発現量をインターナルコントロールにして各サンプルのmRNA量を一定にしてGATA-1,GATA-2,EVIー1,Ets-1の発現パターンを解析した。その結果、赤血球と巨核球系ではGATA-1の発現は同様に誘導され高いレベルを維持した。しかし、GATA-2は巨核球系では分化成熟が進行しても高いレベルを維持したのに対し赤血球では発現が低下した。EVI-1もGATA-2と同様の発現パターンを示した。Ets-1も巨核球系のみで誘導された。 以上の結果より、赤血球系と巨核球系はきわめて近い関係にあるが、両細胞系列でGATA配列に結合する因子に発現パターンの差異があり、これが両者の分化の方向を決定してる大きな要因である可能性が示唆された。
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