研究概要 |
昨年度に引き続きプロピオン酸血症患者の遺伝子解析を行った。プロピオン酸血症の原因酵素であるプロピオニルCoAカルポキシラーゼ(以下PCCと略)はα、β2つのサブユニットで構成されている。我々は6例のα鎖欠損患者の遺伝子解析を行なったところ、cDNAの解析では5つのミスセンス変異(R52W,Q272R,R374Q,P398L,W534L)と、2ヵ所の欠失(111bp del.,nt.1355-1465;103bp del.,nt.1466-1568)及び3人の患者に共通した84bpの挿入を検出した。ゲノムDNAの解析でlllbpの欠失に関してはその下流のイントロンの5'スプライス部位のG^<+1>→A変異が認められ、これによるエクソンスキッピングと考えられた。84bpの挿入は正常でもわずかに生じるaberrant splicingであり原因変異ではないと考えられた。 次に、約2.0kbのαPCCcDNAをトランスファーベクターpBac3にサブクローン後、このプラスミドDNA1μgと直鎖状バキュロウイルスベクター0.25μgを混合しHigh Five細胞に加えて27゚Cで3日間培養し、αPCCを持つ組換えウイルスを作成した。この組換え体ウイルスを昆虫細胞に感染させ、5日間培養後その上清を回収しαPCC蛋白質の発現をウエスタンブロット法でチェックしたがαPCC蛋白質は検出されなかった。今後ベクター、昆虫細胞の培養条件、トランスフェクションの条件等をさらに検討する必要がある。
|