研究概要 |
1. 研究代表者は昨年度,高肺血流型先天性心疾患の肺高血圧症例の肺組織において肥満細胞キマーゼの発現が増加していることを明らかにしてきた.また肺高血圧の指標である肺血管抵抗値とキマーゼ陽性肥満細胞数に正の相関が存在することを見い出した.そこで,肥満細胞数と心疾患との関連をさらに明らかにするために,症例数や対照数を増やして検討した.その結果,肺組織の肥満細胞の数そのものが心疾患群で有意に増加していることが判明した.即ち心疾患患者では肺組織肥満細胞数が増加し,しかもキマーゼ産生細胞であること,更に肺高血圧との関連が明らかになった.そこで,キマーゼ-アンギオランシン系の作動を検討するために,アンギオランシンIIの蛋白発現を調べた結果,キマーゼ産生部位に一致してアンギオランシンIIの発現を認めた.対照肺や肺高血圧の軽い場合では認めず,キマーゼ-アンギオランシン系の肺高血圧成立への関与が強く示唆された.今後,アンギオテンシンIIのレセプター拮抗薬の肺血管への効果を検討したい. 2. 小児後天性心疾患である川崎病と先天性心疾患の比較を行った.左右短絡型の先天性心疾患では血中のIL-8,MCP-1などのケモカイン,また血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の増加は認められなかった.一方川崎病では血中のIL-8,MCP-1,VEGFの著しい増加を認め,両疾患のサトカイン,ケモカインプロフィールの相違が明らかになった.
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