小児の重症心室性不整脈を生じる危険因子としての心室の再分極異常を検討するために、フクダ電子社製VCM3000を用いて、体表面87点での単極誘導を記録しQRST等積分値図を作製した。 6-15歳の正常児32例のQRST等積分値図は、左前胸部から右前胸部下部を正領域、右前胸部上部および背部を負領域が占め、積分値の極大および極小をそれぞれ一個有する単一双極子パターンを示した。運動誘発性の心室頻拍の既往児8例においても、ほぼ同様の単一双極子を呈した。標準12誘導心電図においてQT時間の延長を認め、失神のない8例のQRST等積分値図では、単一双極子パターンを示したが、左前胸部の積分値は正常より高く、右前胸部の積分値は正常より低い傾向がみられた。家族性で、重症不整脈が原因と考えられる失神既往のあるQT延長症候群4例では多極性や、前胸部全体の積分値が著しく高値を示す異常所見が認められた。 また再分極異常を検出する他の方法として、心筋局所の活動電位持続時間を反映するとされるActivation Recovery Interval値と、その不均一性の指標であるARI dispersionを求めた。単発の心室性期外収縮のみを有する正常児22例のARI値の最短値は178+/‐20msec、最長は343+/-20msec、そのdispersionは165+/-17msecであった。
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