心表面心電図から記録したActivation Recovery Interval(QRS波のdV/dT minimumからT波のdV/dT maximumまでの時間)はその心筋局所の活動電位持続時間とよく相関し再分極異常の検出法として注目されている。小児において体表面心電図のARIのばらつきが、心室頻拍のsubstrateとしての活動電位持続時間の不均一性を反映するかどうかを検討するため、6歳から15歳の小児を対象とし失神の既往のある家族性QT延長症候群4例(LQTS群)、QTc0.46以上の延長例で不整脈を有しない群8例(LQT群)、QT延長症候群以外の心室頻拍を有する8例(VT群)、散発性の心室性期外収縮22症例(PVC群)において、ARI isochrone map、ARIc値(Bazett式で補正したARI値)、ARIc dispersion(前胸部および背部87点の体表面のARIc最長値と最短値の差)を比較した。ARI isochrone mapでは、正中部から左前胸部にかけてARIの短い領域が、背部から右前胸部上部にARIの長い領域が占め、最長点と最短点の分布も各群で特徴的な所見はみられなかった。しかし心室頻拍を有するVT群、LQTS群のARIcの最長値は対照となるPVC群に比し著しく高値を示しARIc dispersionも高い値を示した。不整脈のないLQT群のARIc値の最長値は有意に高値であったが最短値も延長しておりARIc dispersionは正常値であった。さらに心表面にある程度近接した第五肋間を中心とした前胸部右鎖骨中線から左中腋窩線35点のARIc dispersion、および標準胸部誘導のQTc dispersionを各群で比較した。35点ARIc dispersion、および標準胸部誘導のQTc dispersionにおいてもPVC群とLQT群は差が無く、心室頻拍を有するVT群、LQTS群は有意に高値であったが、各群の重なりがみられた。以上よりARIc dispersionの高値は心室頻拍発生の一因としての心筋局所の活動電位持続時間の不均一性の増大を反映していると考えられた。
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