小児重症心室性不整脈の危険因子を、体表面電位図を用いた再分極のばらつきの検出(ARI c-d ; Activation Recovery Interval dispersionを用いた)および自律神経による心拍変動の特徴と再分極の変化という2点で検討した。以下に本研究によって明らかになった点をまとめる。 1)ARIc-dは年齢による変化は大きくなく、平均+2標準偏差値を正常上限の基準値とすると、どの年齢層でもおおむね200前後であった。 2)各疾患群ごとの検討では、症状・家族歴のあるQT延長症候群例および失神や突然死の危険の高い心室頻拍群でARIc-dが高値を示し、症状のないQT延長例や単発性の心室性期外収縮群では正常例と有意差がなかった。 3)心室頻拍発生の一因としての心筋細胞活動電位持続時間の不均一性の増大はARIc dispersionの高値として検出できると考えられた。 4)心拍変動解析では、副交感神経パワーを表すHF成分の変動係数はQT延長症候群において低い傾向があり、特に突然死した例で低値であった。 5)交感神経パワーが大きく変化した時間の心電図波形にT波形の変化や心室性期外収縮を認め、自律神経支配の変動と心室性不整脈をおこす再分極異常が関連していることが示唆された。 いずれも重症心室性不整脈に至る機序に関わった非侵襲的な検出法と考えられ、検診などで心電図により不整脈が発見された小児の予後判定に応用できると思われる。
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