研究概要 |
1.目的 エストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン受容体(PR)の遺伝子多型性がIgA腎症の臨床的、組織学的進展に影響するか否かを検討する。 2.対象と方法 今年度は初回腎生検施行後に一定のプロトコールによるステロイド療法を現時点で終了したIgA腎症患児10名を対象とした。 (1)末梢血DNAから、PCR増幅法によりERやPRの遺伝子多型性を特定し、norma homozygote(No),heterozygote(He),abnormal homozygote(Ab)に分類した。 (2)発症時、初回および第2回生検時の尿蛋白量、尿中ナトリウム排泄分画(FENa)、血清総蛋白、尿素窒素、クレアチニン、ナトリウムを測定する。また、ステロイド療法前後で安静時血漿レニン活性、アンジオテンシンII、腎生検糸球体濾過量(GFR)を測定した。 (3)初回と第2回腎生検所見を組織学的スコア化で評価する。腎病理組織を急性期所見と慢性期所見に分け、それぞれを急性期スコア(AI)と慢性期スコア(CI)としてスコア化した。 (4)対象をER遺伝子の変異群(He,Ab)、非変異群(No)、PR遺伝子の変異群(He,Ab)、非変異群(No)の4群に分類し、4群間で(2)、(3)'の項目について差異があるか否か検定する。 3.結果および考察 (1)ERについて 10例中5例のER多型性が確認され、内訳はHe型4名、Ab型1名であった。この内15歳の女児例はHe型で、思春期に発症し2年間の治療にもかかわらず慢性的な変化が進行している。12歳男児例はAb型で、治療2年後には腎生検スコア、臨床所見ともに改善している。 (2)PRについて 現在PCRの条件を設定中である。 現時点ではまだ症例数が少なく、統計学的な検討はできなかった。今後症例を増やして検討予定である。
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