臍帯血幹細胞移植後の免疫能特にGVL効果を検討するため、今年度は臍帯血リンパ球の細胞障害活性の評価と同種骨髄移植後のリンパ球機能について研究した。臍帯血リンパ球のCD8陽性T細胞は、フローサイトメトリー法による細胞質内パ-フォリン保有率やCD3抗原を介するキラー活性は成人に比較し極めて低値であった。さらに表面抗原の検討では、このキラー活性はCD57抗原陽性CD8細胞の比率と相関があった。キラー活性は様々なサイトカインにより増強されるが、我々のこれまでの検討ではIL-2がもっとも効果があった。最近ではIL-12のキラー増強効果が臨床的にも検討されているが新生児リンパ球に対する効果は不明である。今回臍帯血リンパ球のIL-12レセプター発現をフローサイトメトリー法で検討したが、成人に比べ発現は若干増加している傾向にあった。しかし、機能の点ではまだ検討すべきと考えている。 CD60抗原は臍帯血リンパ球にはほとんど発現されていないが成長と共に増加し、メモリーT細胞に発現する抗原で、成人ではいわゆるTH2タイプのヘルパーT細胞であることを明らかにした。このCD60抗原陽性細胞は、一般的な刺激では増加せず、EBウィルス感染後の伝染性単核細胞症でも増加しない。しかし、PPD刺激やリンパ球混合培養後増加する傾向にあり、さらにCD60抗原陽性細胞は同種骨髄移植後は著しく増加し、CD60陽性CD8細胞の増加も見られた。このCD8細胞のキラー活性は現在検討中で、来年度予定の臍帯血幹細胞移植後の挙動も興味深く今後詳しく検討したい。さらに移植後のリンパ球のサイトカイン産生能や応答性も検討する予定である。
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