乳幼児期におけるアレルギー疾患の発症には、アトピー素因に加え種々の環境要因が関与していることが知られている。特に、乳幼児期早期からのアレルゲン暴露は個体のアレルギー反応を増幅し、結果として「アレルギー・マーチ」として知られる多様なアレルギー疾患の発症を惹起する可能性がある。今回の研究では、主として以下の点に関して検討を加えた。 1) 乳幼児期の末梢血IgE濃度の変化と、好塩基球表面のF_<CE>RI発現との関連について明らかにする。 2) 新生児B細胞によるIgE産生調節機構の検討。特に、CD70/CD27によるIgE産生増強について。 3) 重症アトビー性皮膚炎、ならびに原発性免疫不全症の病態生理研究。 乳幼児期のアトピー疾患症例では血清中IgEは年齢依存性に増加し、末梢血中好塩基球表面のF_<CE>RI発現は急速に増強し、IgEを結合する。In vitroの検討では、好塩基球表面のF_<CE>RI発現ならびにIgE結合はIgE自体により増強された。このような表面抗原発現の増強は新たな蛋白合成に依存し、かつ抗体によるIgEの架橋を必要としないことから、好塩基球での構成的な蛋白合成とIgE結合による受容体蛋白の安定化を反映していると考えられた。 さらに、新生児B細胞を用いた研究では、CD70遺伝子導入細胞をB細胞に添加すると、用量依存性にIgE産生が増強された。CD27陰性B細胞を用いた場合にはこのような効果は観察されなかった。これらの事実は、以前に報告した新生児B細胞によるIgG産生の研究とあわせ、新生児B細胞の形質細胞分化におけるT細胞由来サイトカインならびにリガンドの役割を明らかにした。 また、種々のアレルギー症状を合併する免疫異常症の病態解析を通じて、アレルギー反応の増強に関与する遺伝子異常、サイトカイン産生異常などが明らかにされつつある。
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