研究概要 |
1.葉酸受容体(FR)高発現細胞株および低発現細胞株の選択:FR高発現細胞株であるKB細胞を葉酸除去RPMI(Gibco BRL)牛胎児血清を10%添加した低濃度葉酸培養液(葉酸濃度5-50nM,D10media)内で培養.このKB細胞(D10KB)からメソトレキセート(MTX)耐性株(C2-MTX-R,FR低発現)を樹立した. 一部,C2-MTX-RをMTX除去D10 media内で長期培養しC2 revertannt(C2-Rev,FR高発現)を作成した. さらに乳癌細胞株であるMCF-7細胞(FR低発現)はD10 mediaに10%の葉酸添加(2.2μM)RPMIを加えて培養した(最終葉酸濃度約300nM). C2-MTX-RはFRの発現が親株D10KB細胞に比しタンパクレベルで2%,mRNAレベルで6%と著明に抑制され,さらにnurun-on法により転写レベルでのFR発現が特異的に抑制されていた. 2.核抽出蛋白の分離:核蛋白はAusubel等の方法により抽出した. 各細胞株から抽出した核蛋白は遍在性転写因子であるSp1をゲルシフト法により半定量し,その有用性を検定した. 3.結合部位の同定:(1)放射性および蛍光標識プローブを用いたゲルシフト法により結合部位の同定をおこなった. FR遺伝子Exon1上流を数種の制限酵素で切断し100〜200bpの断片を作成,また蛍光標識オリゴヌクレオチドをプライマーとしたPCRにて蛍光標識プローブを作成した. D10KB細胞の核抽出蛋白およびHinfl restricted fragment(-352/-461)をプローブとしたゲルシフト法にて,プローブ特異的DNA結合蛋白が検出された. このDNA結合蛋白はFR低発現細胞株であるC2-MTX-RおよびMCF-7でその結合が特異的に低下し,C2-RevではD10KBと同程度に認められた. 薬剤耐性獲得にともなうFRの発現抑制細胞(C2-MTX-R)および低FR発現細胞(MCF-7)双方で,FR遺伝子発現調節領域への結合蛋白の結合の変化が認められたこと,さらにはC2-Revで可逆的再現が認められたことは,この領域での発現調節が高次的または組織特異的発現調節に関与していることが示唆された. (2)次に-352/-461断片での結合塩基配列をさらに同定するために,まずこの領域を塩基配列のオーバーラップを含む5つの断片(各36bp)に細分化したプローブを作成し,それぞれのプローブを用いて核蛋白の結合性を検索した. -390/-425領域への結合性が示唆され,現在その特異性,組織特異性の検索,さらに結合塩基配列を合成オリゴヌクレオチドを用いた競合ゲルシフト法にて検索中である.
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