臍帯血幹細胞移植で移植片対宿主病(GVHD)が少ないことは移植を行う上で大きな利点ではあるが、白血病などの血液悪性腫瘍の場合はかえって欠点ともなり得る。これまでに我々は臍帯血T細胞はアロ抗原に対して成人T細胞に匹敵する反応性を示すことを報告し、臍帯血幹細胞移植においてもGVHDに関連したGraft-vs-leukemia(GVL)効果を期待できることを報告してきた。リンパ球混合培養上清中のサイトカインを測定すると、IL-2産生の最高値とその到達日数は臍帯血と正常成人には差がなかった。IL-2はGVHDのエフェクター細胞(T細胞やNK細胞)の効果発現に重要なサイトカインでありることからIL-2が存在すれば臍帯血移植においても骨髄移植と同様にGVHDが発症することを示唆している。臍帯血のNK細胞についてはその細胞傷害機序にはアポトーシスとネクローシスがあり新鮮臍帯血NK細胞は標的細胞にアポトーシスを誘導することを報告した。臍帯血NK細胞をIL-2で活性化すると標的細胞のネクローシスが急速に増加することを報告した。これらの結果は臍帯血移植においてNK細胞依存性のGVHD/GVLが期待できることを示している。また、GVHDの発症には抗原提示細胞が関与しているが、強力な抗原提示能を示す樹状細胞(Dendritic cell)のアロ抗原提示能についても検討した。臍帯血からCD34磁気ビーズを使用して造血幹細胞を選択的に採取し、これに各種の造血因子存在下で1-2週間培養しCD83陽性樹状細胞を選択的に得た。このDendritic細胞はアロ抗原によく反応したが、ステロイドは分化を抑制した。一方、臍帯血移植では血小板の回復が遅延することが報告されており、トロンボポエチン(TPO)の血小板増加作用が期待されている。我々は樹状細胞がTPOレセプターc-Mplを発現していることを見い出した。TPOは樹状細胞の抗原提示能は変化せず臍帯血移植でGVHDの増強されないことを報告した。
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