研究概要 |
大脳皮質形成異常の発生機序解明に関するこれまでの一連の実験的研究成果を基礎に、平成9年度は以下の知見をえた。 1.DNA阻害剤であるCytosine arabinosideを,妊娠マウスに,妊娠13.5日と14.5日(I群),15.5日と16.5日(II群)、及び17.5日と8.5日(III群)に投与すると、いずれの群でも、側脳質周囲の母細胞層が選択的に障害される。生後、子マウスを経日的に観察すると、大脳半球の発達が正常群に比べ不良となるが、その程度はI群で最も顕著であった。また、I群においてのみ大脳皮質下に多数の神経細胞が集合した異所性灰白質が認められた。この異所性灰白質は白質に囲まれており、異所性灰白質を構成している神経細胞の配列や樹状突起の走行はきわめて不規則であった。さらに、異所性神経細胞が母細胞障害後に生成されたものであることが組織化学的に証明された。異所性神経細胞を電顕的に観察すると、早期から細胞体および樹状突起にシナプス形成が進行していることが観察され、生後20日以後になると樹状突起の平滑面やスパインがすでに完成した正常形態となっていることも確認された。 2.大脳皮質形成に及ぼすミクソウイルスの胎内感染実験では、2TCD_<50>力価の野性株ムンプスウイルスを用い、これを妊娠12日目のハムスターの胎盤に接種した。生後2日から7日目までの脳を免疫組織化学的及び電顕的に観察すると、生後2日目では脳室周囲の母細胞や脈絡叢に強いウイルス抗原が観察された。電顕的には、生後2日で細胞内に異常構造物が観察されるようになり、生後4日頃から一部が壊死に陥った。さらに、生後7日になると脳室周囲の上衣細胞に大小の封入体が蓄積し、多くは壊死・脱落するとともに脳室拡大、大脳皮質の狭小化等が惹起された。
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