研究概要 |
#ビスダイアミン投与時期を変えることで生じる心血管奇形の形成的な差と経提細胞分布パターンとの関係の解明 1. 妊娠10日、11日、12日のWister系母ラットにビスダイアミンを投与し、新生仔に見られる心血管奇形について検討した。妊娠10日のものでは大動脈弓奇形が100%(n=86)に、妊娠11日のものでは総動脈管症と大動脈奇形が92,8%(n=95)に、妊娠12日投与群では大動脈奇形とファロー四徴が45.4%(n=108)にみられた。 2. 妊娠10日、11日、12日にビスダイアミンを投与した母ラットの胎仔各4匹をNew(1973)の方法で培養し、胚の形態と循環動態の変化を観察した。妊娠10日投与群では神経管閉鎖の遅れが著明で、心管のループ形成や第3,4,6動脈弓の分化は不十分であった。妊娠11日投与群では、ループ形成期に心室腔の拡大と流出路の極端な蛇行が認められ、流出路内ではコントロールに比較して心室への逆流が顕著であった。組織学的には、心外膜の一部が欠損していた。妊娠12日投与群では、胚全体の成長の遅れ以外に明らかな異常は観察されなかった。 3. これらの胚を抗N-CAM抗体を用いて免疫染色し、共焦点型レーザー顕微鏡で三次元的に観察した。妊娠10日投与群では神経堤周囲のN-CAM分布がコントロールに比して粗で、心臓への連続はみられなかった。妊娠11日投与群ではN-CAMは神経堤周囲から心臓まで連続してみられたが、N-CAM陽性細胞の数がコントロールに比して少なかった。妊娠12日投与群ではN-CAM発現パターンにコントロールと差はみられなかった。 以上より、ビスダイアミンは心臓神経堤細胞や間葉細胞の移動に影響を与え、これが心臓発生の時期に特異的に作用するとそれに応じた心血管奇形が生じると考えられた。
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