1. 4週齢の雄ウィスターラット(n=26)にモノクロタリン(MC)60mg/kg[n=20]または生理食塩水[n=6;対照群]を1回皮下注。MC皮下注を行ったラットの半数にはアドレノメデュリン(AM)5μgの生食溶解液を[n=10;PH-AM群]、残り半数のラットには生理食塩水のみを[n=10;PH-生食群]、いずれもMC皮下注直後から計3週間皮下投与した。対照群のラットには、生理食塩水のみを最初の皮下注直後から計3週間皮下投与した。PH-AM群、PH-生食群、対照群の各々について、最初の皮下注から3週間後に、ペントバルビタールによる麻酔下に内頚静脈からカテーテルを挿入し右室収縮期圧を測定した。右室圧測定直後に採血し血漿中AM濃度をRIAを用いて測定した。その後ラットを麻酔死させて心肺を摘出し、摘出心臓から右室重量を測定して右室重量/体重比を算出。右室収縮期圧、右室重量/体重比を肺高血圧の指標とした。摘出肺はホルマリン固定後切片のHE染色を行い、肺小動脈の中膜厚と外径を計測して肺小動脈中膜厚/外径比を算出し肺血管病変の指標とした。血中AM濃度は、PH-生食群が対照群と比較して有意に高く(1.3倍)、PH-AM群ではさらに高値(1.9倍)であった。PH-生食群では、対照群と比較して右室収縮期圧、右室重量/体重比、肺小動脈中膜厚/外径比がいずれも有意に高値(いずれも約3倍)であり、PH-AM群では、これらの値がPH-生食群と比較して有意に低値(各々81%、87%、87%)であった。 以上の結果から、AMの投与はMCによるラット肺高血圧の進行を抑制することが示された。 2. 小児期心疾患患者において血中AM濃度をRIAを用いて測定し、その病態生理的意義を検討した。肺高血圧を伴う左右短絡の先天性心疾患では正常の1.6倍、チアノーゼ性先天性心疾患では正常の3.2倍と著明な高値を示し、これら心疾患における内因性AMの関与が示唆された。
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