発育期の激しいスポーツ活動がカルニチンにどの様な影響を与えるかを検討するために以下2つの実験を行った。 (1)クラブ活動前後での代謝変動 大学男子バレーボール部員10名を対象としてクラブ活動前後での血液、尿を採取し、生化学的検討を行った。運動時間は2時間で運動強度はRMR6から8程度であり、平成9年11月に行った。運動前後で血液中のミオグロビンは有意に上昇した。脂質代謝では遊離脂肪酸、総ケトン体は著名に上昇したが、乳酸の上昇はみられなかった。カルニチン代謝では運動によりアセチルカルニチンは有意に上昇したが、遊離カルニチンには有意な変化はみられなかった。カルニチン前駆体であるブチロベタインは運動後に上昇した。トリメチルリジンについては現在の所測定できていない。 (2)運動負荷試験での代謝変動 小学校高学年から成人までを対象として自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を行った。負荷方法は毎分20ワットのランプ負荷を行い、開始前から2分毎に静脈の留置針より採血を行った。生化学的検討では運動負荷により遊離脂肪酸やケトン体は上昇しなかったが、乳酸は上昇した。カルニチン代謝については現在検討中である。 以上から、脂肪酸がエネルギーとして動員される運動においてはカルニチン代謝が短時間のうちでも変動することが示唆され、恒常性を保つために前駆体の動員もおこなわれるのではないかと推測された。今後、他のアシルカルニチンやトリメチルリジンについても検討を行う予定である。
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