1)トリメチルリジンの測定法の開発 カルニチン前駆体の一つであるトリメチルリジンについては、遊離カルニチン、アシルカルニチン、ブチロベタインなどの測定の際に用いたタンデムマススペクトルによる方法を用いて測定した場合にこれまでの報告値の数倍程度高値となった。この原因について検討したところ、血液など生体試料中に存在するアミノ酸の一種でトリメチルリジンと同じ分子量を持つホモアルギニンによる妨害のためであることが判明した。そこで、試料をプロピル化した後アセチル化する事により分子量の異なった物質とし、再度タンデムマススペクトルによる分析を行ったところ、ほぼ報告値と同様の値となった。現在の所、感度としては微量の血清サンプル測定には十分ではないのでクリーンアップ等を含めて測定法の再度の検討を行っている。 2)運動負荷試験でのカルニチン代謝 中学生のうち、一般のものと特に優れた運動成績を有するものとで運動負荷試験を行った。運動優良群では有意に最大酸素摂取量、最大負荷量が高かった。運動負荷試験は20ワット/分のランプ負荷で行ったが、前半は有酸素運動および無酸素運動との混合であり後半はほぼ無酸素運動に近いものとなる。この際に脂肪酸酸化はむしろ抑制されケトン体産生は抑制された。運動優良群のほうが抑制の程度は軽かった。カルニチン代謝については現在検討中であるが、あまり大きな変化は無さそうである。 小児期のトレーニングが運動時の有酸素能の向上をもたらすと考えられ、今後これらのトレーニング効果においてカルニチン代謝がどのように関わっているかを明らかにしていきたい。
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