研究概要 |
Farber病は酸性セラミダーゼの欠損により、セラミドが関節、皮下などに蓄積し、組織球の集族した肉芽腫形成を特徴とする疾患である。一方、セラミドがアポトーシスシグナル伝達分子であることが多数報告され、セラミドの蓄積と病態との関わりが指摘されている。 我々は培養皮膚線維芽細胞を用いFarber病2症例における酸性セラミダーゼ酵素の遺伝子異常を明らかにし、セラミド代謝の検討、セラミド蓄積によるサイト力インの分泌、アポトーシスの検討を行った。2症例において、酵素活性は正常の約10-20%と低値を示した。cDNAの塩基配列決定により、1例はT290A(V97E)/G1105A(V3691)の複合へテロ接合、もう一例はGGT285-287del(V96 del)のホモ接合であることが判明し、COS1細胞での発現実験を行い、酸性セラミダーゼの活性は正常の10-25%と低下を認めた。内因性セラミド蓄積率測定では、正常コントロール1%に対し、Farber病は11%と正常の約10倍のセラミド蓄積を認めた。また、正常細胞、Farber病由来の細胞において、サルファタイト負荷、C2セラミド負荷においても経時的なIL-6の産生量においては差を認めなっかた。症例1の結節除去術で切除された組織は、H&E染色ではリンパ管に富む靭帯様のやや疎な線維性組織の中に、明るい核と泡沫状の大型の細胞質を有する細胞が島状に集族して散在する。免疫染色ではCD68のみが陽性で、Fas,bcl-2,S-100,Keratin,Vimemtin,Lysozyme,α1-antitrypsin,smooth muscle actln,NSE,IL-6は陰性であり、明るい核と泡沫状の大型の細胞質を有する細胞はmacrophage由来と考えられ、また所々に核が濃縮し分葉したアポトーシスを疑わせる像が認められた。しかし、Tunnel法にてアポトーシスを検討したが、所々に陽性の核が認められるのみで有意な陽性を認めることは出来なっかった。組織よりDNAを抽出し、DNAラダーの検討では、ほんのわずかにラダーを認めるのみであった。以上より、結節部位ではアポトーシスは起きていないと考えられた。
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