研究概要 |
研究計画に基づき,放射性胆汁酸投与後の胆汁への排泄を経時的に測定することにより,胆汁酸の腸管からの吸収動態を検討した.アイソトープを用いた検討のため,実験動物として7週齢のウィスター系雄性ラットを用いた.胆汁酸吸収に対する人乳および人工乳の影響を検討するため,1週間の間,通常通り水と肥料で保育したグループ(水保育群;n=6),人乳と肥料で保育したグループ(人乳保育群;n=5),人工乳と肥料で保育したグループ(人工乳保育群;n=6)の3群のラットに対し外科的に胆管ろうを作成,固定後にラット体内で変化を受けない^<14>C-cholic acidを経口投与,投与後48時間後までの総胆汁排泄量と,放射性胆汁酸の排泄量について検討した.同様に3群のラットに対し,^<14>C-cholic acidを静脈内投与した後の胆汁中への放射性胆汁酸の排泄率についても検討した.【成績】胆管瘻作成後48時間までの総胆汁量は,水保育群18.4±2.5(ml),人乳保育群13.6±3.7,人工乳保育群17.7±3.2と,水保育群で多く人乳保育群で少ない傾向があった.経口投与した放射性胆汁酸の胆汁への経時的な排泄率には群によって著しい差が見られた.水保育群:初期の排泄は最も速く,1時間後で37%,48時間後でも90%の回収率であった.人乳保育群:人工乳保育群:排泄の立ち上がりは人乳保育群が遅く,投与2時間までは人工乳保育群に比し有意に低かった.48時間での回収は人乳保育群86%,人工乳保育群82%と水保育群より劣ったが人乳保育群と人工乳保育群間で有意差は見られなかった.放射性胆汁酸を静注した場合,胆汁中への経時的な放射性胆汁酸の排泄は3群において全く差は見られなかった.【結論】静注した場合の結果から,少なくともラットにおいて,肝細胞への胆汁酸の取り込み,胆汁への排泄に関しては,栄養法による変化は見られない.経口投与後の結果から,少なくともラットにおいて,人乳での保育は胆汁酸吸収を遅延させることが判明した.しかしながら,人乳保育群のラット消化管内は末梢化物で充満しており,胆汁酸吸収の遅延はラット体内で人乳蛋白が分解できないことが原因とも考えられる.今後,小腸ループ法を用いて,同様の検討を行っていく予定である.
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