研究概要 |
ヒト骨髄より単核細胞を分離後、非付着細胞を抗CD34抗体、抗c-Kit抗体を用いて、FACS Vantageでsortingを行い、造血前駆細胞を純化した。回収細胞の純度は95%以上であるが、骨髄単核球の1/1000-2000個の回収率であった。これらの細胞を用いて、初期の造血に作用するであろう、Steel Factor(SF),the ligand for flk2/flt3(FL),Interleukin-3(IL-3),Thrombopoietin(TPO)に対する反応性を検討した。主にsingle cellでの短期間(1週間)の液体培養により、これらの造血因子の作用を明らかにした。未熟造血細胞の増殖にSF,FL,TPOの3種類の組み合わせで最大半分のクローンが誘導されたが、この3種類の因子へのIL-3の添加は増殖クローンの数を増加させるのではなく、増殖の速さを増大させた。二次培養を施行した結果より、増殖したクローンには多くのコロニー形成細胞が含まれており、IL-3の添加での初期培養では赤血球系のコロニー形成細胞を有意に増加させた。各因子単独での1週間の培養でsingle cellのまま維持された細胞をさらに4種類の造血因子の添加で増殖するクローンがそれぞれ10-20%認められたことより、この4種類の因子はすべて未熟造血細胞のsurvival factorとしての役割を有していると考えられた。CD34抗体、c-Kit抗体で純化した細胞群と上記の因子で1週間培養後の細胞をNOD/SCIDマウスへの異種間移植を行った。培養前の細胞では1%前後のヒト細胞をマウスの骨髄で検出した。しかし、培養後の細胞では明らかなヒト細胞は検出することが出来なかったことより、これらの因子で維持された細胞には骨髄再構築能が失われている可能性が推測された。今後、培養条件や再構築の際の細胞純化、細胞数について詳細な検討が必要と思われた。
|