研究概要 |
我々は、1996年にインスリンと類似した構造をもち、またインスリン様の代謝作用を有するインスリン様成長因子。(IGF-。)を初期大量に投与することによって、NODマウスの発症を有意に遅らせることを報告した(Y.Kaino,et al.Diabetes Research and Clinical Practice,34(1),1996.第40回日本糖尿病学会)。そして、糖尿病発症率の高いコロニーを用いた追実験で、NODマウスの糖尿病発症を抑制し、特徴的病理所見である膵島炎を軽減することを明らかにした。このIGF-I療法におけるNODマウスの末梢血や脾の総白血球数、リンパ球のT/B比、CD4、CD8サブセットの検討では、投与群とコントロール群の間には有意差が認められず、免疫抑制剤や免疫賦活剤を投与して糖尿病を抑制したこれまでの研究結果とは明らかに異なっていた。また、今回のIGF-I療法の投与量の1/10の量で実験終了までの長期にわたって投与したが、内因性インスリン分泌は同程度に抑えられていたにもかかわらず、この方法では糖尿病は抑制されなかった。このことは、IGF-I投与の予防効果が‘β-cell rest'の機序に基づくものでもないことが示唆された。 IGF-I投与によるNODマウスの糖尿病発症抑制の明確な機序を明らかにすべく、現在次のような実験を続けている。 I. IGF-I投与の至適投与量、投与期間についての検討 これまでに、4通りの投与法でその効果を検討している。最終結果が出るまでに、あと半年から1年くらいかかるが、初期大量投与である程度の発症抑制が期待できそうである。 II. 膵β細胞でのTh1、Th2サイトカインのmRNAの発現 今日、1型糖尿病の成因として、Th1とTh2のバランスが注目されており、糖尿病発症にはThl優位であることが関係していると考えられている。前述のIGF-I投与群とコントロール群における膵β細胞でのTh1、Th2サイトカインのmRNAの発現を経時的に調べて、両群間に差があるかどうかを調べている。Th1サイトカインとしてIFNγ、TNFβ、IL-2、Th2サイトカインとしてIL-4、IL-10の発現をみているが、、現在までの実験では有意な差は出ていない。
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