川崎病における冠動脈病変の発症機序と予防を目的として、内皮細胞にヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)とヒト冠状動脈血管由来内皮細胞(HCAEC)を用いて、TNF刺激による接着因子の発現と、Momocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の産生を共に、ELISAで測定した。接着因子発現の系にはintact型γ-グロブリン(γ-Glb)添加した場合の影響も検討した。 結果 1. 接着因子発現 (1) E-selectin、VCAM-1共に非刺激状態ではHUVEC、HCAEC共にその発現は微小で、TNF 100U/ml 6時間刺激で吸光度は約10倍に上昇した。TNF 1000U/ml 6時間刺激では、TNF100U/ml 6時間刺激に比して、吸光度は若干上昇した。いずれの吸光度もHCAECがHUVECに比して大であった。一方、TNF 6時間刺激と、24時間刺激を比較すると、E-selectin、VCAM-1共に発現に差はみられなかった。 (2) ICAM-1は非刺激時にすでに発現がみられ、TNF刺激で量依存性に、かつ24時間刺激が6時間刺激に比して吸光度の増大が認められた。刺激時吸光度は、非刺激時の最大2.7倍認められた。ICAM-1の発現もHCAECがHUVECに比して大であった。 (3) TNF 100U/ml 24時間刺激によりHCAEC上のICAM-1発現は、γ-Glb 0.1〜100mg/ml添加で、発現の抑制がみられたが、非刺激状態でのICAM-1の発現には影響を及ぼさなかった。 2. MCP-1産生 (1) 健康小児18例の血清中MCP-1は228±84pg/ml、川崎病患児35例(発症5日以内)の血清中MCP-1は1420±914pg/mlと川崎病患児は有意に高値を示した。 (2) TNF刺激によるHUVECおよびHCAECからのMCP-1産生を検討すると、TNF72時間刺激は24時間刺激に比して有意にMCP-1の産生が高値であるが、TNFが250U/ml〜1000U/mlの濃度でMCP-1産生はプラトーに達した。いずれの系もHCAECがHUVECに比してMCP-1産生が大であった。 結論 内皮細胞の種類により接着因子発現、MCP-1産生に差がみられ、HCAECがいずれも大であった。γ-GlbはTNFの接着因子発現を抑制したことから、γ-GlbはTNF中和作用があることが推測された。
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