研究概要 |
小児の炎症性疾患においてアラキドン酸代謝産物(特にロイコトリエン;LTやトロンボキサン;TX)は化学伝達物質として重要な役割を果たしている.産生物増加の機序としてmRNAや酵素蛋白のレベルでのup-regulationの機構が存在することが,国内外の研究者により明らかにされつつある.ところで喘息もアレルギー性炎症がその本態であるとのであるとの認識がなされている.我々は,小児の気管挿管を必要とする大発作で気管支洗浄液中のLTC4とLTB4産生が著明に亢進していることを証明し報告した(文献1).また,平成9年度より引き続きin vitroの系をもちいて,アラキドン酸代謝系酵素,cytosolic phospholipase A2(cPLA2),COX1,COX2,5-lipoxygenase(5-LO),LTC4 synthase,LTA4 hydrolaseおよび活性蛋白,5-LO activating protein(FALP)のup-regulation機構を解析するため,各酵素のmRNAおよび蛋白発現をRT-PCR法およびWestern Blotting法をもちいて検討した.ヒトの白血病細胞であるHL-60細胞をDMSOで好中球に分化させた時に,mRNAレベルで5-LO,LTC4synthase,LTA4hydrolaseが誘導されることにより,LTB4とLTC4の産生が亢進することを見いだした(文献2).更に,endotoxinの存在下に好中球を培養すると,cPLA2とCOX2のmRNAと酵素蛋白が誘導され,アナフィラキシーのメディエーターであるTXA2の産生が亢進することを見いだし,病態の解明に寄与することができた(文献3).また,抗炎症,抗アレルギー性薬剤がこれらの酵素系にどのように作用しているかについても一連の研究をおこない結果を報告した(文献4,5).
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