研究概要 |
川崎病や重症細菌感染をはじめとする炎症性疾患や気管支喘息などのアレルギー性疾患等,小児期の種々のアレルギー/炎症性疾患の発症および進展にアラキドン酸leukotrienes/LT産生系の代謝産物が関与していることが推測されている.LTB4はLT産生系産物であり,多核白血球(PMN)に対する強力な遊走因子のひとつとして,PMN自身により主に産生される.この合成経路における分子生物学的な制御の機序はほとんど研究されていない.我々は,PMNに種々のサイトカインを加えてインキュベーションし,PMN産生LTB4に対する影響を検討した.アレルギー性炎症の発現時に優位になると考えられているTh2サイトカインに分類されるIL-4,IL-10,IL-13のうちIL-4,IL-13で6-9時間をピークにLTB4の産生が増加した.その制御機序をしらべるために,RT-PCRを使用してLTA4 hydrolase,cytosolic PLA2,5-lipoxygenaseおよびLTA4 hydrolaseのmRNAの発現を調べた.これらサイトカインの用量/時間経過とLTB4の産生量の変動に一致してLTA4hydrolaseの発現の増強が認められた.Northern blotでもLTA4hydrolaseのnRNAの発現の増強を確認した.Western blotによる検討でもIL-4,IL-13によりLTA4hydrolase酵素蛋白の発現量が増加していることが明らかとなった.PMNにTh2サイトカインによるmRNAレベルでの新しいupregulationの機構が存在することが明らかとなった.
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