研究概要 |
基礎疾患を有さない貧血女性37名(年齢22.3±4.3歳)を対象に種々の貧血マーカーと亜鉛動態との関連を検討した。亜鉛動態は1μmol/kgの亜鉛を静注し、前、30分、60分、90分、120分に採血して分布容量と半減期より求めたTotal body zinc clearance (ClZn)で表わした。亜鉛欠乏が中等度以上と診断された女性18名(ClZn>25ml/kg/hour)でフェリチン20ng/dl以上、血清鉄90μg/dl以上を呈した女性6名(A群)には酢酸亜鉛を34mg/日、フェリチン20ng/dl未満、血清鉄90μg/dl未満を呈した女性12名(B群)には酢酸亜鉛を34mg/日と鉄剤100mg/日、8週間投与し4週毎のヘモグラムと血液検査を施行した。 A群は血清鉄が低下したのみで貧血の改善は得られなかった。B群はヘモグロビンが10.3±0.34から12.1±0.45g/dlへ(p<0.01),血清鉄は56±27から89±35μg/dlへ(p<0.05),血清亜鉛は89±9.7から110±10μg/dlへ(p<0.05)、エリスロポエチンは31.2±10.2から19.2±11.2mU/mlへ(p<0.05)有意の改善を示した。A群の治療前の赤血球数は351±32×10^4/mm^3、ヘモグロビン10.3±0.34g/dl、MCH29.3±2.4pg、MCV91±4.2fl、UIBC210±23μg/dlであった。対象女性37名のClZnと赤血球数、ヘモグロビンの関係を見て見るとそれぞれr=0.613(p<0.01)、r=0.451(p<0.05)で亜鉛欠乏と赤血球数の低下に著名な相関が見られた。 したがって亜鉛欠乏性貧血の診断基準は、(1)ヘモグロビン12.0g/dl以下、赤血球数380×10^4/mm^3以下の正球性正色素性貧血、(2)血清亜鉛の低下は必ずしも認めない、(3)正球性正色素性貧血を呈する他の疾患を除外する、(4)亜鉛欠乏と同時に鉄欠乏を伴うことが多い、とすることが妥当であると考えられた。
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