研究概要 |
神経外胚葉由来腫瘍のガングリオシド分析:脳神経細胞の成熟とガングリオシド組成の推移 脳神経系は表皮外胚葉より、神経溝や初期神経管が発生し、中心管の上皮が多列上皮、神経上皮細胞へと分化する。神経上皮細胞の核は、DNAを合成し、移動、細胞分裂を反復し、何層もに分けられるようになり、上衣細胞や中枢神経系が形成される基礎となる。この外胚葉の各種発生分化段階に由来する腫瘍のガングリオシドを分析し、神経系の発生分化や臨床的意義について検討した。 対象及び方法:^<1.>13歳男、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)胸郭原発、^<2.>5ヵ月女、細胞性上皮腫(EP)、側脳室、^<3.>1歳男と^<4.>9歳男、神経芽細胞腫(NB)、左後腹膜と左副腎、4例よりの摘出腫瘍組織。対照は^<5.>.3歳男 インフルエンザ脳症の剖検脳白質(W)、灰白質(G)を分析した。分析は、以前に報告した方法に従った。 結果:症例^<1-4>,^<5w>,^<5a>のガングリオシド総量をシアル酸量(mg/g wet weight)で表示すると、それぞれ、0.038,0.28,0.27,0.22,0.21,0.72であった。ガングリオシド%分布は、PNET(症例1)とEP(症例2)はGM_3,GD_3,GD_<1a>が主成分をなし、それぞれ、72.7,7.2,17.6%と64.5,17.3,8.3%であった。NB2例のGM_3,GM_2,GM_1,GD_3,GD_<1a>はそれぞれ、46.0,22.0,3.4,1.4%と、63.9,2.7,3.0,9.4%であった。 考察:シアル酸量は発生分化とともに増加し、一番未熟なPNETが最低量を示した。PNET、EPではGM_3,GD_3の単純ガングリオシドが主成分を成し、未熟な神経組織であることを示唆した。NBはGM_2,GM_1,GT_<1b>,GQ_<1b>が新たに検出され、a,b経路ガングリオシドの生合成がなされ、より分化している事を示唆した。また、発症年齢の異なるNB2症例間で、ガングリオシドの%分布差があり、1歳未満発症例でのGQ_<1b>の高値は、より分化していることを示唆していると考えた。これらの腫瘍は摘出後、残存腫傷に対しPBSCT研究会等のプロトコールに従って化学療法を併用しているが、ガングリオシドの分折より、残存腫瘍検出や、予後判定のマーカー、免疫療法等の標的抗原にもなりうると考えた。
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