今年度は昨年度の研究成果を踏まえ、小児および成人のMDSの赤芽球系、顆粒球系、巨核球系について、電子顕微鏡的、および細胞化学的に検討を行った。また、昨年度研究対象であった症例についてもさらに詳細な検討を加えた。対象症例は小児のMDS、成人、二次性MDSなど合計43例であった。顆粒球系にみられる異常としては、nuclear pocketが多く、特にダウン症候群に伴う小児のMDSでは7例中4例にみられた。赤芽球形では核のスポンジ様変化が小児例で多かった。巨核球・血小板系の異常は少なかった。病型別にみるとrefractory anemia(RA)では赤芽球系では電子顕微鏡的に異常が多く、特に、担鉄ミトコンドリアは11例中5例にみられ、スポンジ様核は11例中4例にみられた。RAEB-in transformation(RAEB-T)では顆粒球系の異常が最も高くnuclear pocktetは11例中8例にみられた。顆粒球系の異常に比べ、赤芽球系の異常は少なかった。アポトーシスは顆粒球系、赤芽球系の両系統にみられた。電子顕微鏡細胞科学的にペルオキシダーゼ反応を観察すると、ミエロペルオキシダーゼ陽性顆粒の少ない症例がみられた。血小板ペルオキシダーゼ反応は陽性を示す幼若細胞があり、巨核芽球系の増殖が示唆される症例があった。電子顕微鏡形態学、細胞化学的にみると、MDSの細胞は光学顕微鏡では知り得ない異常が明らかとなった。
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