研究概要 |
IGF-II受容体はリソソーム酵素のターゲティングに必要なマンノース-6ーリン酸(M6P)受容体と同一で、IGF-II/M6P受容体と呼ばれる。本年度はヒトIGF-II/M6P受容体を精製してその抗体を得てIGF-II/M6P受容体定量システムを作ることを目的とした。 1,ヒトIGF-II/M6P受容体の精製 : リソソーム酵素を大量に発現している粘菌Dictyostelium discoideumの分泌液をアフィゲル-10に吸着させてアフィニティカラムを作製する。次いでアセトン&エーテル処理により除蛋白&除脂質を行いパウダー化したヒト胎盤をこのカラムに通すことにより、ヒトIGF-II/M6P受容体の粗画分を得る。次いでセファクリルS-200HRにてゲル濾過を行う。これらの操作の結果、ヒト胎盤より分子量約290kDaのIGF-II/M6P受容体粗画分が精製でき、SDS/PAGE上で単一のバンドを得ることができた。その収量は3.3μg/g tissueであり、ウシ胎仔肝の値(52.5μg/g tissue)の約1/20であった。 2,得られたヒトIGF-II/M6P受容体約1mgを用いてニュージーランドシロウサギを免疫中であるが、残念ながらまだ良い抗体が得られたことは確認できていない。 IGF-II/M6P受容体には細胞局在のものとは別に細胞から離れて血中を流れるものがあるとされるが、その詳細は不明である。抗体を用いた定量システムができれば、IGF-II&IGF-II/M6P受容体反応系をより詳細に解析することが可能となる。今後低身長児、過成長児の血中濃度を測定してその病態に迫りたい。その中でIGF-II&IGF-II/M6P受容体系の反応異常が病態と関係していると考えられる症例を探し、既に手元にあるcDNAや抗体を活用し、病態を分子レベルで解明したいと考える。
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