研究概要 |
小児アレルギー患児の末梢血単核細胞を重症複合免疫不全(SCID)マウスに移入し、アレルギー疾患の病態を解明する目的で、本年度は気管支喘息患児の単核細胞のアレルギー性炎症に関わる機能発現を検討した。 ダニ抗原に感作された気管支喘息患者リンパ球はダニ抗原刺激にてinterferon-γ(IFN-γ)産生が低下し、interleukin4(IL-4)産生が亢進し、ヘルパーT(Th)細胞がtype2(Th2)優位になっていたが、寛解患者においてはそのインバランスが変化し、IFN-γ産生の亢進とIL-4産生の低下を示す、type1(Th1)優位になっていることが認められた。寛解患者末梢血リンパ球よりT細胞クローンを得、IFN-γ/IL-4産生能を評価することにより、寛解患者リンパ球のサイトカイン産生をクローンレベルで解析し、Th細胞のサブタイプを決定した。得られた8クローンのうち、6クローンはIL-4のみを産生した(Th2)が、IFN-γを同時に産生するもの(Th0)も2クローン認められた。そのうち1クローンは大量にIFN-γを産生した。調べた範囲ではTh1クローンは認められなかった。 気管支喘息寛解患者においては、アレルギー疾患を増悪させるとされるTh2細胞が依然として多く存在するが、少数のIFN-γを大量に産生するTh0細胞により免疫系が調節されている可能性が示唆された。 気管支喘息患者リンパ球においてはIL-4,IFN-γなどのサイトカインがアレルギー性炎症反応の惹起または抑制に関与することが示唆された。また寛解患者で得られたT細胞クローンをヒトアレルギーモデルマウスに移入することにより、リンパ球を集団レベルだけでなく、クローンレベルでもその用いる機能分子の役割を解明できると考えられる。
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